プログラム

1夜 9月9日(土) ミューズ・キューブホール

フルートと通奏低音のためのソナタ ハ長調 BWV1033         Jean-Maurice MOURAT 編曲         Ⅰアンダンテープレスト Ⅱアレグロ Ⅲアダージョ Ⅳ メヌエット

フルートとオブリガート・チェンバロのためのソナタ ト短調 BWV1020  石村 洋 編曲
     Ⅰアレグロ Ⅱアダージョ Ⅲアレグロ

無伴奏フルートのためのパルティータ イ短調 BWV1013          マルセル・モイーズ編曲             Ⅰアルマンドとドーブル Ⅱクーラント 3サラバンド  Ⅳブーレ アングレーズ

フルートとオブリガート・チェンバロのためのソナタ イ長調 BWV1032  石村 洋 編曲
     Ⅰヴィヴァーチェ Ⅱラルゴ・エ・ドルチェ Ⅲアレグロ

フルートと通奏低音のためのソナタ ホ短調 BWV1034        Gerd-Michael DAUSEND 編曲       Ⅰ アダージョ・マ・ノン・タント Ⅱアレグロ Ⅲアンダンテ Ⅳアレグロ


2夜 9月21日(木) ミューズ・キューブホール

フルートとオブリガート・チェンバロのためのソナタ 変ホ長調 BWV1031  Michael Langer 編曲        Ⅰアレグロ・モデラート Ⅱシチリアーノ Ⅲ アレグロ

フルートと通奏低音のためのソナタ ホ長調 BWV1035           Ferdinand Uhlmann 編曲        Ⅰアダージョ・マ・ノン・タント Ⅱアレグロ Ⅲシチリアーノ Ⅳアレグロ・アッサイ

無伴奏ヴァイオリンパルティータ第2番 BWV1004より シャコンヌ       石村 洋 編曲

 フルートとオブリガート・チェンバロのためのソナタ ロ短調 BWV1030    石村 洋 編曲
     Ⅰ
アンダンテ Ⅱラルゴ・エ・ドルチェ Ⅲプレスト


抜粋プログラム 9月27日(水) ミレニアム・ホール

フルートとオブリガート・チェンバロのためのソナタ 変ホ長調 BWV1031 Michael Langer 編曲

フルートとオブリガート・チェンバロのためのソナタ ト短調 BWV1020  石村 洋 編曲

フルートと通奏低音のためのソナタ ホ短調 BWV1034      Gerd-Michael DAUSEND 編曲

無伴奏ヴァイオリンパルティータ第2番 BWV1004より シャコンヌ       石村 洋 編曲

 フルートと通奏低音のためのソナタ ホ長調 BWV1035      Ferdinand Uhlmann 編曲

フルートとオブリガート・チェンバロのためのソナタ ロ短調 BWV1030   石村 洋 編曲

       ※都合によりチラシ情報にあるハ長調のソナタはホ長調に変更しました



高橋望さんによる曲目解説


バッハの作品はすべての器楽奏者にとって、特別に重要なレパートリーである。それはバッハの音楽が単に、感覚に訴える叙情的な美しさや心地よい運動性を備えているにとどまらず、その根底にある論理的(数学的)構築性が、演奏者にとっても聴衆にとっても、他の作曲家の作品からは得られない知的充足感をもたらすからだろう。7曲の独奏ソナタ、無伴奏パルティータ1曲をレパートリーに持つ〈フルート〉においてもそれは同様で、ここにフルートの平田公弘、ギターの石村 洋により、最高度の音楽性とテクニックを要する全8作品が連続演奏会の形で聴けることの意義は計り知れない

■バッハのフルートソナタについて

?真作と偽作

 7曲のソナタのうち、BWV.1020103110333曲は、今日、バッハの作品ではないとする考えが有力となっている。しかし偽作とされる作品の成立には、バッハの次男カール・フィリップ・エマヌエルが関わっていること、そして何よりいずれも魅力的な作品であるため、ソナタ全7曲として扱われることもまた多い。

?フルートとオブリガートチェンバロのためのソナタ
 通常はチェンバロとの二重奏の形で演奏されるが、チェンバロの右手は旋律的な動きでフルートと対話を交わし、左手は低音部を支えるという、実質3つのパートからなる〈トリオソナタ〉の形で作曲されている。

?フルートと通奏低音のためのソナタ
 フルートと通奏低音2つのパートで書かれているが、通奏低音のパートはチェンバロの低音部をヴィオラ・ダ・ガンバなどの低音楽器が補強して演奏するので、通常は3つの楽器により演奏される。



■フルートと通奏低音のためのソナタハ長調BWV.1033
 7つのソナタ中もっとも小規模で、終曲に穏やかで温かみある〈メヌエット〉が置かれるなど、全体にこじんまりした可憐な楽想を持つ。バッハから与えられた作曲の練習課題として、息子か弟子が、バッハおよび他者の作品を素材に作りあげたとの説もある。


■フルートとオブリガートチェンバロのためのソナタト短調BWV.1020
 冒頭チェンバロ(ギター)独奏の速いパッセージで開始されるなど、変ホ長調BWV.1031と似た構造を持つ。絶え間なく刻まれる伴奏音形に乗り、終始、フルートがのびやかに、ないし機敏に流麗な楽想を歌う。次男カール・フィリップ・エマヌエルの作ともされる。


■無伴奏フルートのためのパルティータイ短調BWV.1031
 伴奏楽器を伴わないフルート独奏のために作曲された組曲。たった一本の旋律の流れが、バッハの綿密な設計によって、次第にポリフォニー(多声音楽)として空間に織りなされていくさまは、崇高にして深遠である。当然のこと演奏は至難。


■フルートとオブリガートチェンバロのためのソナタイ長調BWV.1032
 第一楽章の一部が消失しており、この部分はさまざまな方法で補完され演奏されている。前奏に導かれてフルートが登場する協奏曲スタイルで、踏みしめるような堅固な伴奏リズムの上に、明快で安定感ある楽想が格調高く続いていく。第二楽章のふと息をつくような休止や、終楽章の微かに憂いを含んだ転調も魅力的である。


■フルートと通奏低音のためのソナタホ短調BWV.1034
 筆写譜が数多く存在することから、バッハの存命時より広く演奏されていたと考えられている。それだけに内容も充実しており、しっとりした叙情や毅然とした表情、細かい動きの連続が作り上げる構築美など、揺るぎない風格を備えている。終楽章では躍動的なモチーフの反復が、さらに楽想に鮮やかさを加える。


■フルートとオブリガートチェンバロのためのソナタ変ホ長調BWV.1031伴奏音形の運びや、メロディックな 性格、カール・フィリップ・エマヌエル作曲説など、ト短調BWV.1020との類似点が指摘されるが、引き締まった美しさを持つト短調に対し、曲調はより明朗で屈託がなく親しみやすい。甘美でセンチメンタルな〈シチリアーナ〉はことに愛されている。


■フルートと通奏低音のためのソナタホ長調BWV.1035
 7つのソナタの最後、1740年代に作曲されたと考えられている。それまでの荘重なバロック調から、次第に優美なギャラント様式へと移り変わりつつあった当時の音楽趣味を反映しており、たおやかで落ち着いた足取りの緩徐楽章、明るく花が舞い散るような急速楽想。いずれも高貴な品格を身にまとう。


シャコンヌ
 石村 洋によるギターソロが一曲演奏される。無伴奏ヴァイオリンパルティータ第2番の終曲として名高い〈シャコンヌ〉のギター編曲である。石村はこの作品を、旋律の歌いあげと鮮やかな技巧の駆使に目をうばわれるのではなく、バッハの意図は4小節の低音進行の上に形作られる変奏の反復にあるとの考えによって演奏している。なおこの〈シャコンヌ〉と、フルートソナタBWV.102010321030のギターパートは石村の編曲による。


■フルートとオブリガートチェンバロのためのソナタロ短調BWV.1030
 7曲のソナタ中、最も規模が大きく書法も複雑で、バッハの器楽ソナタの中でもとりわけ傑作とされている。リズムや楽想の変化を伴って2つの楽器が対等な対話を交わしていく第一楽章、豊かな情感に彩られた緩やかな第二楽章、そして終楽章は速いテンポのフーガが、後半は躍動感あふれる舞曲〈ジーグ〉となって締めくくられる。

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