石村洋の

ギターとひととき

                            PART Y

      
      赤城 淳 先生




日比谷公園 ローマ建国伝説の像
(昭和13年 イタリアより寄贈)






狭山市民会館小ホール

2009年7月25日 午後2時00分
石村ギター教室 04-2959-4112


                           ごあいさつ

真夏の日中のお暑い中、ご来場頂き、誠に有難うございます。
 心から御礼申し上げます。
この「ギターとひととき」というコンサート、狭山市の近隣の皆様など多くの方にに育てられて
第6回目を迎えることが出来ました。その成果を踏まえて今年3月、都内でも同様のコンサート
「ギターとひとときin東京」を行い好評をいただきました。ひとえに皆様のお蔭と感謝申し上
げます。

 今回は、フルートアンドギターデュオとして20年以上共に活動してきた平田さんに初めて「お友達紹介コーナー」
に出演していただきます。長年私に様々な形で音楽的な良い影響を与えて下さった平田さんに、改めて感謝申し
上げます。

 また狭山市入曽にお住まいだった赤城淳先生の戦時中のギター独奏用作品で、以前、紹介しました音詩集
「武蔵野」以外の作品を演奏します。終戦記念日も近い今日、戦争が芸術家の心にどのような痕跡を残し
ていったか、そんなことを思わずにはいられな作品の数々です。

                                    石村 洋

プログラム

1.オープニングテーマ
      愛のロマンス              スペインのギター曲

2.ギターによる映画音楽A
      ジョニーギター             ヴィクター・ヤング
     帰らざる河               ライオネル・ニューマン
     ムーンリヴァー             ヘンリー・マンシーニ
     夜霧のしのび愛             J.V.ウェッター

3.楽しいギターのお稽古C
       カルカッシ・ギター教則本         マテオ・カルカッシ
         第一部 ニ長調の練習曲
          ワルツ  アレグレット
       誰もが一度は弾く小品たち
      ハ長調のワルツ(ソル)
      水神の踊り(フェレール)
      ラリアーネの祭(モーツァーニ)

4.ソナタイ長調K311「トルコ行進曲」付き
                     W..モーツァルト(1756-1792
    第1楽章 主題と6つの変奏
    第2楽章 メヌエット
    第3楽章 ロンド「トルコ風」 アレグレット

        < 休 憩 >

5.ある出征学徒の音楽         赤城淳(大正8年〜平成19年5月)    前奏曲「小さな喜び」   昭和13年 7月 6日
   前奏曲「祝福」      昭和17年 1月 2日
     前奏曲「寂寞」      昭和18年 1月 2日
     前奏曲「獨言」      昭和18年 1月 4日
   行進曲「若人」      昭和17年10月30日

6.お友達紹介 平田公弘さん(フルート)城ヶ島の雨                                 梁田 貞 作曲 野田暉行 編曲
      五木の子守唄               野田暉行 編曲
      与作ファンタジー             石村 洋 作曲
      魅惑の朝                 ラ・ヴィ・シャンカール

8.エンディングテーマ
      アルハンブラの思いで           フランシスコ・タルレガ



プログラム解説                         石村 洋

 1 愛のロマンス(映画「禁じられた遊び」テーマ曲)
   「ギターとひととき」では毎回、ギター曲の中で最も多くの方に愛されてきたと思われる
   「愛のロマンス」を最初に演奏します。
 
2 ギターによる映画音楽A
   

 ギターの音色が印象的な映画音楽の第2弾です。今回もそんな曲を4曲。「ギターとひとときPartT」で演奏した「禁じられた遊び」の音楽を入れると3回目になります。ジョニーギターは1954年作の西部劇「第砂塵」のテーマ曲。「帰らざる河」も同年の西部劇。酒場女の役出演しているマリリン・モンローがギターを手に歌っています。


大砂塵

帰らざる河

 ムーンリヴァーは、オードリー・ヘップバーン主演の「ティファニーで朝食を」(1961年)の主題歌です、これもヘップバーンギターを持って弾き語りしています。映画のサウンドとして彼女が本当にギターを弾いていたとは思いませんが、私が見てもちゃんとした手つきでギターを弾いているようでした。「夜霧のしのびあい」は1965年のギリッシアァ映画というのですが、調べが付きませんでした。けれども、この曲はギタリストのクロード・チアリの演奏で大ヒットしたことがあまりにも有名ですね。チアリはその後日本人女性と結婚し、智有 蔵上人(ちあり くろうど)という日本名で日本国籍を取得し、日本に永住して活躍しています。娘さんもタレントとして活躍中の様です。


 
 
3.楽しいギターのお稽古B

 このコーナーでは、ギターを学んでいる人が日頃練習しているような曲目を紹介します。そうして、そういう曲は、無味乾燥なものでは無く、愛すべき美しい音楽だと感じていただければ幸いです。

 初めに「カルカッシギター教則本」第1部の練習曲を演奏します。このコーナーの1回目では「ハ長調」、2回目には「ト長調」を紹介しました。そして今回が「ニ長調」です。楽典の知識のある人ならば「シャープが一つずつ増えてきたのだな」と気が付かれることと思います。「カルカッシギター教則本」はこのように楽典(音楽の基礎智識)を説明する様に、進んでいきます。


  カルカッシ

 次にギターの教科書の副教材として良く弾かれるギターの小品を3曲演奏します。このなかでソルは、スペイン人ですが、あとの2曲の作者、フェレールとモーツァーニはイタリア人です。一般にギターはスペイン起源の楽器と思われていますが、クラシックギターは、どちらかと言うと起源に関してはイタリアとの繋がりが深いと思われます。


 
 4.ソナタイ長調K311「トルコ行進曲」付き

  モーツァルトがウィーンに定住した初期の頃か、あるいはそれよりもっと前の作品かもしれ
ないと言われています。私のような音楽学の素人が聴いても、作風が明かに晩年の音楽とは異なる
と思います。

  第3楽章が断然有名ですが、音楽史の上では第1楽章がソナタ形式でなく、変奏曲だということ
が大事件です。そんなことは、当時は決して有り得ない大胆な発想でした。

トルコの軍楽は現代でもエスニックミュージックの愛好家の間で、好んで聴かれる音楽ですが、
17世紀ごろのヨーロッパの人々にもよく知られた異国趣味の音楽でした。第3楽章のトルコ行進曲
はその軍楽を模倣した音楽で、ベートーヴェンなどの作品にも同種の作品があります。

 
5.ある出征学徒の音楽―赤城淳先生の戦時中の音楽
 赤城淳先生は、私の住む狭山市の入曽地区にお住まいだったので、亡くなられる前の10年間ほど
個人的に親しくさせていただきました。あまり仕事上のことはお聞きしなかったのですが、戦後
マンドリン合奏の世界で指導者として幅広く活躍されたことは、ギター・マンドリン界の人には知れ
渡っています。マンドリン合奏のための作曲、編曲などは夥しい数に上るものと思います。

   昭和18年4月に早稲田大学入卒業と同時に軍隊への入隊が決まっていましたが、その年の1月
、ギター独奏作品を集中的に作曲されています。私には心から名作と思われる音詩集「武蔵野」
はそうした状況下で生まれました。「武蔵野」(全5曲)の中で一番最初に作曲されたのは「欅」で、
1月5日の日付が書かれています。最後は「丘」で1月19日です。


 赤城先生の心の変化を想像して頂くために、全部の曲を成立順に並べて、私なりの感想を短い
コメントを載せたいと思います。
  
 前奏曲「小さな喜び」  昭和13年7月6日 明るく育ちの良さを感じさせる小品。  
 前奏曲「祝福」  昭和17年1月2日  青年期のロマンチックな感情表現。
 行進曲「若人」  昭和17年10月30日  高揚感に溢れ、また品の良さを感じさせる行進曲。
 前奏曲「寂寞」  昭和18年1月2日  暗く悲しい雰囲気。大変美しい作品
 前奏曲「獨言」  昭和18年1月4日  「寂寞」の曲想を更に一層踏み込んだ世界。
 音詩集「武蔵野」  昭和18年1月5日〜19日  重苦しい程の暗さ、けれども知的な構成力。
  行進曲「若人」は後に壮大なマンドリンオーケストラ作品として編曲されましたが、これが原作です。
昭和18年の作品はどれも、異様なほど暗く、けれも美しい作品です。私の知る赤城先生は明るくユーモア
に富み前向きな人でしたので、特別そんな思いがします。2つの前奏曲と「武蔵野」は同じ気配を感じさせる
音楽ですが、両者の間には明かな違いもあります。「寂寞」と「獨言」は音がたゆたうように流れ、形式感の
弱さが感じられますが、「武蔵野」の各曲はしっかりした形式を持ち、それぞれ個性的なリズム音形からで
きていて、モチーフの可能性を実験している様にも見えます。
 
6.フルート、ギター二重奏

   平田さんも、狭山市入曽にお住まいなので、それがご縁で20年も一緒に活動してきました。
「城ヶ島の雨」「五木の子守唄」のどちらも、一流の作曲家が音楽に深みを与える編曲を施し、それを更に
ギターで弾くように直した自慢のレパートリーです。練習と本番を合わせて今までに何千回奏いたことでしょう。
「与作ファンタジー」;早朝の山の中、渓流の流れ、風の音、きつつきが樹をくり、鳥たちは鳴き始め、
鶯は歌の練習をする。遠くで与作が樹を切っている。そんな出だしの曲です。「魅惑の朝」;西洋の音楽家と
交流の有ったインド古典音楽の巨匠ラヴィシャンカールが、フランスのフルートの巨匠ジャン・ピエール・ランパル
のために書き下ろした本物インド古典音楽です。原題は「ラーガ、トーディ」ラーガとは音階、歌い方、雰囲気、
演奏されるべき時刻、宗教的内容などがすべてワンセットになった「調子」のことで、トーディ調とでも訳したら
好いかも知れません。遅い朝に演奏されるラーガです。
 
7.アルハンブラの思い出
 「ギターとひととき」のエンディング・テーマとしてタルレガのアルハンブラの思い出を弾きます。
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